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京都地方裁判所 昭和62年(行ウ)16号 判決 1989年7月14日

京都府向日市寺戸町西田中瀬二番地二一

原告

藤原康裕

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都市右京区西院上花田町一〇番地

被告

右京税務署長

関稔

右指定代理人

下野恭裕

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告が原告に対し、昭和五九年七月六日付でそれぞれなした原告の昭和五六年分の所得税の所得金額を四八六万九、〇〇五円、同五七年分の所得税の所得金額を五四四万八、〇二八円、同五八年分の所得税の所得金額を六四四万三、四九〇円と更正した処分のうち、別表1記載の右各係争年分の確定申告欄の各総所得金額を超える部分及びそれに対応する各過少申告加算税の賦課決定処分をそれぞれ取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  原告(請求原因)

(一)  原告は、飲食業を営む者であるが、昭和五六年ないし昭和五八年分(以下「本件係争各年分」という。)の所得税の確定を、それぞれ法定申告期限までに申告したところ、被告は、原告に対し、昭和五九年七月六日付で、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

原告が、右の更正処分及び過少申告加算税賦課処分について、昭和五九年八月二九日、被告に異議申立をしたところ、被告は、昭和六〇年六月二五日付で、原処分を一部取り消す決定をした(以下、右一部取消により減額となった額による昭和五九年七月六日付更正処分及び過少申告加算税賦課処分を本件各処分という。)。

原告は、本件各処分に対し、昭和六〇年七月一八日、国税不服審判所長に審査請求をしたが、同所長は、昭和六一年一一月二七日付で、審査請求棄却の裁決を行ない、裁決書の謄本は同年一二月六日に原告に送達された。

以上の課税の経緯は別表1記載のとおりである。

(二)  しかし、本件各処分は、税務調査につき第三者の立ち会いを認めず、理由の開示を行わずになされ、また、原告の所得を過大に認定した違法が存する。

よって、原告は、被告に対し、本件各処分の取消を求める。

二  被告(答弁・抗弁)

1  答弁

(一) 請求原因(一)の事実を認める。

(二) 同(二)は争う。

2  抗弁

(一) 課税の経緯及び推計の必要性

原告は、向日市寺戸町西田中瀬二番地二一(以下「原告宅」という。)においてスナックを、同市寺戸町小佃一九番地東向日町駅前センター内において持ち帰り専門のすし製造販売業を営む者であるが、被告は、原告が提出した本件係争各年分の所得税の確定申告書に記載された所得金額が適正なものかどうかを確認するため、部下職員をして、昭和五八年九月一三日から昭和五九年五月二三日まで前後七回に亙り、原告宅に臨場して調査に当らせたが、原告は、「なんで調査に来たんや。」「理由を具体的に言え。」「帳面は見せる必要ない。」などと申し立て、帳簿書類の提示要請に対して応じる姿勢を示さなかった。また、取引先の名称及び取引金額等や仕入先及び仕入金額等につき「言う必要はない。」などと申し立てるばかりで、全く調査に応じなかった。したがって、原告に対し、推計により算定した所得金額によって本件係争各年分の課税処分を行なう推計の必要性がある。

(二) 原告の事業所得金額

原告の本件係争各年分の事業所得金額及びその算出方法は、別表2のとおりである。

(算出所得金額)

原告のスナック業に係る本件各係争年分の算出所得金額は、被告が把握し得た原告の本件係争各年分の酒類の仕入金額(別表2の<2>)を、別表3ないし5の各<3>欄記載の各同業者の酒類の仕入率(酒類の仕入金額の売上金額に対する割合)の平均値でそれぞれ除して算出した売上金額に別表3ないし5の各<5>欄記載の各同業者の算出所得率(算出所得金額の売上金額に対する割合)の平均値をそれぞれ乗じて算出したものである。

原告のすし製造販売業に係る本件係争各年分の算出所得金額は、被告が把握し得た原告の本件係争各年分の玉子焼の仕入金額を、別表6ないし8の各<3>記載の同業者の玉子焼の仕入率(玉子焼仕入金額の売上金額に対する割合)の平均値でそれぞれ除して算出した売上金額に、別表6ないし8の各<5>欄記載の各同業者の算出所得率(売上金額から売上原価及び一般経費の合計額を控除した金額の売上金額に対する割合)の平均値をそれぞれ乗じて算出したものである。

なお、原告の昭和五八年一一月及び一二月分の玉子焼の仕入金額が不明であることから、同年分の玉子焼の仕入金額は、同年一月分から一〇月分までの玉子焼の仕入金額の平均値を一二倍した額とした。

(特別経費)

1  給料賃金

原告の本件係争各年分における給料賃金は、いずれも前記の各売上金額に、別表3ないし8の各<7>欄に記載の各同業者の給料賃金比率(給料賃金の売上金額に対する割合)の平均値をそれぞれ乗じて算出した。

2  利子割引料

原告の本件係争各年分の借入金利息のうち、建物に係るもの以外の支払利息と建物に係るもののうち事業用と認められる金額の合計である(別表B)。

原告の本件係争各年分の借入金利息のうち建物に係るものについては、その支払い金額に、建物の店舗部分の床面積(一七六・〇四平方メートル)の建物の総面積(二七三・一八平方メートル)に対する割合(事業専用割合、六四・四五パーセント)をそれぞれ乗じて事業用と認められる金額を算出した。

3  地代家賃

原告が株式会社東向日駅前センターに対して支払った地代家賃(各年とも一一九万〇、四〇〇円)及び中亀建設株式会社に対して支払ったガレージ代(昭和五六年分一七万八、五〇〇円、五七、五八年分各一八万円)の合計額である。

4  建物の減価償却費

建物(店舗兼用住宅)に係る減価償却費は、左記のとおり本件係争各年分とも定額法により計算した。

取得価額 <1> 三、三八六万一、二〇八円

残存価額(一〇%)

を控除した価額 <2> 三、〇四七万五、〇八八円

耐用年数 <3> 三〇年(金属造のもの)

償却率 <4> 〇.〇三四

償却額 <5>(<2>×<4>) 一〇三万六、一五三円

事業専用割合 <6> 六四・四五パーセント

経費算入額 <7>(<5>×<6>) 六六万七、八〇一円

なお、取得価額については、原告がその内容を明らかにする資料を提示しないので、別表9の建物(店舗兼用住宅)に係る建築費の推計計算のとおり算定した。

(事業専従者控除額)

原告が昭和五六年分ないし同五八年分の所得税の確定申告書に記載した原告の妻藤原陽子に係る控除額である。

(三) 推計の合理性

(1) 大阪国税局長は、原告の事業所所在地を所轄する右京及びこれに隣接する京都府下の上京、中京、下京、伏見、宇治、園部の各税務署長に、所得税の確定申告をしている者のうち、Aすし製造販売業(ただし、持ち帰り又は出前専門店に限る。)を営む者、又はBスナック業(スタンドバーを含む)を営む者で、本件係争各年分を通じて次の1ないし5の条件にすべて該当する納税者(同業者)を抽出させたところ、その総数は、Aについて九名、Bについて三三名であった。

1  それぞれ他の業種目を兼業していないこと。

2  青色申告書を提出していること。

3  年間を通じて事業を継続して営んでいること。

4  売上金額が一、〇〇〇万円以上五、〇〇〇万円未満であること。

5  不服申立て又は訴訟継続中でないこと。

大阪国税局長は、右により抽出された同業者のうち、すし製造販売業を営む者に対しては玉子焼の仕入金額を、スナック業を営む者に対しては酒類の仕入金額をそれぞれ照会し、その回答に基づき、別表3ないし7を作成した(同表中、「一」で表示している部分は、金額の確認ができなかったもの)。

(2) 前記の基準は、原告の事業内容に基づき設定したもので、当該基準により選定された本件各同業者は、原告と業者、業態、事業所の所在地及び事業規模において類似性を有し、しかも、その申告の正確性について裏付けを有する青色申告者であるから、その金額等の算出の根拠となった資料は、すべて正確なものである。また、同業者選定は、大阪国税局長の通達に基づき機械的になされたものでその選定に当たって恣意の介入する余地はない。

また、被告が玉子焼の仕入金額を基礎に原告の所得を算出したことは合理的である。すなわち、すしの材料としての玉子焼(厚焼き、だし巻、だて巻)は一般的なものであり、また、持ち帰りすしにおいてはメニューは各店において大差がないと考えられるから、玉子焼の他の材料に占める割合も店によって有意な差異があるとは考え難い。更に、本件では原告が調査に対し非協力的なため数額の確実なものは玉子焼の仕入金額しか把握できなかったのであり、これによる推計を否定すれば、およそ調査に非協力的な納税義務者を不当に利する結果となることとなり、これが他の誠実な納税義務者との間に不公平を生じさせることは明らかである。

(3) したがって、被告が、右により選定された本件各同業者の算出所得率等の平均値を用いて原告の本件係争各年分の所得金額を推計したことには合理性がある。

(4) なお、本件係争各年分の原告の純資産増加額等について計算すると、別表10のとおり、純資産増加額は、昭和五六年分が八九四万六、四二六円、同五七年分が九七三万八、六〇四円、同五八年分が九三五万六、八九一円となり、被告がした本件各処分の額をはるかに上回るもので、本件推計による所得金額と概ね符号し、このことからも、本件推計の合理性を補強することができる。

原告の本件係争各年分の事業所得金額は、前記1のとおりであるから、その各金額の範囲内でなした本件各更正処分及び本件過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

三  原告(抗弁に対する認否・反論)

1  認否

(一) 抗弁(一)の事実をいずれも否認する。

(二) 同(二)の事実のうち、借入金利息の金額、地代家賃の金額及び事業専従者控除額を認め、その余の事実を否認する。

(三) 同(三)を争う。

2  反論

(一) 原告は、本件係争各年分当時スナックを経営している自宅の二階でいわゆる「大小宴会場」なる設備を有して宴会業をも行なっており、仕入商品についてもすし製造販売業、スナック業及び大小宴会業にそれぞれ流用していたものであるからこれらの営業実態を無視した同業者の選定及び原告への同業者率の適用は誤りである。

(二) また、同業者の仕入金額のうち玉子焼の占める割合は極めて少数であり、玉子焼にもいくつかの種類があり、更に、原告は玉子焼をスナック、宴会業のつき出し用として、これらにも流用していたのであるから、玉子焼から原告のすし製造販売業に係る売上金額を推計するには無理がある。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因(一)の事実は当事者間に争いがない。

二  本件各処分の手続的適法性

原告は、請求原因(二)において、本件各処分の前提となる税務調査には、第三者の立ち会いを認めず、かつ理由の開示を行なわない違法が存すると主張する。しかし、第三者の立ち会いを認めるか否かは税務職員の裁量に委ねられている事項であり、調査の理由の個別的、具体的な告知は法律上調査の要件とされているものではなく、本件全証拠をもってしても本件調査を社会通念上相当でないとする事情は認められないから、原告の主張は失当である。

三  推計の必要性

被告は、推計による課税を主張するので、その必要性を検討するに、成立に争いのない乙第二ないし第四号証、証人津田保則の証言を総合すれば、原告が提出した本件係争各年分の所得税の確定申告書にはいずれも所得税算定の基礎となる収入金額、必要経費等の記載がなかったこと、被告部下職員は、昭和五八年九月一三日から昭和五九年五月二三日まで前後七回に亘り原告宅に臨場したが、原告はいたずらに第三者の立会や調査理由の開示を要求するのみで、調査に応じず、とくに昭和五八年九月二〇日、原告宅において、原告に対し税務調査への協力を要請して帳簿書類の提示を求めたが、原告はこれに対して非協力的態度で応対するのみで帳簿書類を提示しなかったこと、更に、同年一二月五日及び翌昭和五九年五月二三日にも原告に対し取引先、仕入れ先等を具体的に教えて欲しいと要請したが、原告はこれに全く応じなかったことが認められこれらの事実によれば、原告が被告の質問調査に対して帳簿書類を提示せず、かつ、これに代わる資料を何ら示さなかったことは明らかであるから、被告が原告の本件係争各年分の所得税を算定するについて推計課税の方法による必要性が認められる。

四  推計の合理性について

そこで、被告主張の抗弁(三)の推計の合理性について検討するに、証人岸本卓夫の証言により真正な成立が認められる乙第五ないし第一七号証、同第一九ないし第三八号証及び同第四〇ないし六〇号証、証人津田保則、証人岸本卓夫の各証言、原告本人尋問の結果の一部、弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果の一部は、前掲各証拠、弁論の全趣旨に照らし、遽かに措信できず、他にこの認定を覆すに足る証拠がない。

(一)  大阪国税局長は、推計により原告の所得金額を算出するのに必要な同業者を選定するため、原告の住所地及びその近隣地を所轄する京都府下の上京、中京、下京、伏見、宇治、園部の各税務署長に対し、所得税の確定申告者のうちすし製造販売業(持ち帰りまたは出前専門店に限る)を営む者及びスナック業(スタンドバーを含む)を営む者であって、いずれの業についても、それぞれ他の業種目を兼業していないこと、青色申告書を提出していること、年間を通じて事業を継続して営んでいること、売上金額が一、〇〇〇万円以上五、〇〇〇万円未満であること、不服申立又は訴訟継続中ではないことの各条件にすべて該当する者を抽出することを求め、すし製造販売業については九名(いずれも持ち帰り専門店)、スナック業については三三名の対象者が得られた。また、原告のすし製造販売業に係る仕入のうち、玉子焼以外のものについて本件係争各年を通じて確実な仕入金額を把握することが不可能であったため、玉子焼仕入金額をもってすし製造販売業に係る売上金額の推計を行なうほかなかった。そこで、右記の同業者について、本件係争各年分の売上金額、算出所得金額(売上金額から売上原価と一般経費の合計を除したもの)及びすし製造販売業については玉子焼、スナック業については酒類の仕入金額を照会した上、すし製造販売業については玉子焼の仕入率(仕入金額の売上金額に対する割合)及び算出所得率(売上金額から売上原価及び一般経費の合計額を控除した金額の売上金額に対する割合)、スナック業については酒類の仕入率及び算出所得率を求め、その結果は、別表3ないし8のとおりであった。

(二)  右認定の事実によれば、同業者の仕入率及び算出所得率算出の対象となった同業者の選定基準は、業種の同一性、事業場所の近接性、業態、事業規模の近似性等の点で同業者の類似性を判別する要件としては合理的なものであり、その抽出作業について被告あるいは大阪国税局長の恣意の介在する余地は認められず、かつ右の調査は青色申告書に基づいておりその申告が確定していることから正確性が高く、その抽出数も同業者の個別性を平均化するに足るものということができる。したがって、右同業者の仕入率及び算出所得率を基礎に原告の所得を推計することに合理性があるというべきである。

(三)  ただし、別表3、4、5のスナック業を営む者のうち番号11の者については酒類以外の物の仕入金額が除外されておらず、また、別表6、7、8のすし製造販売業のうち番号Fの者の昭和五六年度分の玉子焼の仕入金額は、材料費を含む点でいずれもこれを本件の推計の資料とすることは相当でないから、これを除外すると酒類の仕入率の平均は昭和五六年分が一三・四四パーセント、五七年分が一二・七八パーセントとなり、玉子焼の仕入率の平均は、昭和五六年分が二・二七パーセントとなる。

(四)  原告は、被告主張の推計は合理的でないと主張し、その理由として、原告はすし製造販売業、スナック業の他に大小宴会場を営んでおり、これらの各業の間で酒類や原材料の流用があったことを挙げている。確かに、原告本人尋問の結果によれば、原告宅二階には宴会場として用いることのできる設備が備わっていることが認められるけれども、他方、本件係争各年当時、同所において年間六〇回以上の宴会を行なっていたという原告本人尋問の結果は原告本人尋問の結果から認められる原告の営業の人的、設備的規模、弁論の全趣旨に照らし遽かに措信し得ず、同所において宴会を営むことがあったとしても、その頻度、規模は極く僅かなものと推認できるから、未だ、原告の事業をスナック業およびすし製造販売業と把握してその各同業者による推計をすることの合理性を疑わせるほどの事情に当らない。また、原告本人尋問結果によれば、原告が営むすし製造販売業とスナック業は、その営業場所を異にし、すし製造販売業は持ち帰り専門であって酒類を提供しないというのであって、すし製造販売業で残った僅かな玉子焼類を時たまスナック等のつき出しとして持ち込むことがあったにしても、両業種間に仕入れの流用があったとまでは認められない。

(五)  原告は、同業者の仕入金額のうち玉子焼の占める割合が極めて少ないことから玉子焼による推計には無理があることを主張するが、前掲各証拠を総合すれば、被告は、原告の調査非協力により玉子焼以外の仕入について把握することができなかったものであり、同業者の玉子焼の仕入率はいずれの業者においても年によって差が殆どなく、原告の玉子焼の仕入金額自体も本件係争各年を通してその金額に大差がないことが認められ、これらに照らすと、玉子焼の仕入金額をもってすし販売製造業者の売上原価、所得金額を推計することに合理性があると認められる。

(六)  また、原告は、玉子焼にも種類があることをもって、被告の玉子焼による推計が合理的でないと主張するが、前掲各証拠、乙第五二ないし第六〇号証(同業者に対する照会の回答)によれば、通常、玉子焼という名称で、厚焼き、だし巻等を含めた卵の加工品の全部を指すと認められるから、原告の右の主張は理由がない。

(七)  更に、原告は、玉子焼の流用をいうが、前認定のとおり原告が大小宴会業を営んでいたとは認められず、また、原告本人尋問の結果の一部、弁論の全趣旨によると、すし製造販売業で残った僅かな玉子焼類を時折スナック等のつき出しとして持ち込むことがあったにしても、これがスナック業との間に玉子焼等の流用があったとまでは認められないことが明らかであり、右原告の主張に副う原告本人尋問の結果の一部は遽かに措信しがたく、他にこれを認めるに足る的確な証拠がない。したがって、右の原告の主張も理由がない。

五  所得額の算出

抗弁(二)の原告の本件係争各年分の事業所得金額について検討する。

1  算出所得金額

前掲証人津田の証言により真正な成立が認められる乙第六一号証の一ないし三によれば、原告の本件係争各年分の酒類の仕入金額が別表2の<2>記載のとおりであることが認められる。そこで、前示四(三)の同業者の酒類の仕入率の平均値で右の金額を除して計算すると、原告のスナック業に係る売上金額は別表A<1>欄記載のとおりとなる。これに、同業者の算出所得率(別表Aの<5>)を乗じて計算すると、原告のスナック業に係る算出所得金額は、別表Aの<4>記載のとおりとなる。

証人津田保則の証言及び同証言により真正な成立が認められる乙第六二号証によれば、原告は訴外千日精糖株式会社から玉子焼を昭和五六年に五九万〇、〇三〇円、同五七年に五〇万三、〇八〇円、同五八年一月から一〇月までの間に四〇万一、九七〇円仕入れていたことが認められる。昭和五八年一一月、一二月分の仕入金額は被告において把握していないが、推計の前提として通常の仕入金額を想定することが必要であることから、同年一月ないし一〇月の仕入金額の平均値を一二倍し、これをもって昭和五八年分の玉子焼の仕入金額とみなすことは相当であると認められる。そこで、右の仕入金額に前記の同業者の玉子焼の仕入率(別表A<8>欄記載)を乗じて計算すると、原告のすし製造販売業に係る売上金額は、別表A<6>欄記載のとおりとなる。これに同業者の算出所得率の平均値をそれぞれ乗じて計算すると、原告のすし製造販売業に係る算出所得金額は、別表A<9>欄記載のとおりとなる。

2  特別経費

(1)  給料賃金

前掲乙第一二ないし一七号証によれば、すし製造販売業、スナック業の同業者の給料賃金比率(給料賃金比率の売上金額に対する割合)の平均値は別表3ないし8各<7>欄に記載のとおりと認められるから、右に認定した原告のスナック業及びすし製造販売業の売上金額に右の平均値を乗じて計算すると、本件係争各年分におけるスナック業及びすし製造販売業に係る給料賃金はそれぞれ別表A<13>及び<15>欄に記載のとおりとなる。

(2)  利子割引料

原告の借入金利息の額については当事者間に争いがない。

右のうち、建物に係る借入金利息のうち事業用と認められる部分について検討するに、前掲津田保則の証言及び同証言により真正な成立が認められる乙第六四号証の一及び二、成立に争いのない乙第六五号証並びに原告本人尋問の結果を総合すれば、向日市寺戸町西田中瀬二番地二一、二二所在の原告所有の建物(店舗居宅)の総床面積は二七三・一八平方メートルであるところ、右の建物のうち居住用以外の部分の面積は一七六・〇四平方メートル(事業専用割合六四・四五パーセント)であることが認められる。そこで、建物に係る借入金利息の金額に右の割合を乗じて計算すると別表B記載のとおりとなる。

(3)  地代家賃

原告が支払った地代家賃については当事者間に争いがない。

(4)  建物の減価償却費

成立に争いのない第六六号証、前掲の岸本の証言、同乙第六四号証の一、二及び同第六五号証を総合すると、前記の原告所有の建物は昭和五五年九月一八日に新築された鉄骨造三階建二七三・一八平方メートルのものであるが、その取得価額を原告が明らかにしないことから、被告は昭和五五年版建築統計年報に基づき別表9記載のとおりその建築費を推計計算し三、三八六万一、二〇八円としたこと、これを耐用年数三〇年、残存価額一〇パーセントとして定額法により減価償却費を計算し、更に前記(2)で求めた事業専用割合を乗じて各年分の減価償却費を計算し経費算入額を六六万七、八〇一円としたと認められるところ、右の推計の方法及びその前提資料に不合理な点は認められず、また減価償却の方法も公正な会計原則に則ったものと認められるから、建物の減価償却費は六六万七、八〇一円となる。

(5)  事業専従者控除額

原告の妻に係る控除額については、当事者間に争いがない。

3  したがって、原告の本件係争各年分の事業所得金額は、別表A<22>記載のとおりであると認められる。

六  よって、その余の判断をするまでもなく、本件各処分は、いずれも前認定の原告の係争各年分の各事業所得金額の範囲内でなされた適法なものであって、過大認定の違法はなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(判長裁判官 吉川義春 裁判官 菅英昇 裁判官 堀内照美)

別表1

原告の係争各年分の所得税の課税関係一覧表

<省略>

別表2

原告の事業所得金額の計算

<省略>

別表3

スナック同業者の所得率等一覧表(昭和56年分)

<省略>

別表4

スナック同業者の所得率等一覧表(昭和57年分)

<省略>

別表5

スナック同業者の所得率等一覧表(昭和58年分)

<省略>

別表6

すし同業者の所得率等一覧表(昭和56年分)

<省略>

別表7

すし同業者の所得率等一覧表(昭和57年分)

<省略>

別表8

すし同業者の所得率等一覧表(昭和58年分)

<省略>

別表9

建物(店舗兼用住宅)に係る建築費の推計計算

<省略>

(注)1平方メートル当たりの平均工事実施額の算出方法

京都府における居住産業併用建築物(鉄骨造)工事予定額(P85-京都) 床面積の合計 1平方メートル当たりの工事費予定額

1,957,058万円÷161,047m2=121,5215円/m2

1平方メートル当たりの工事費予定額 工事実施額を推計するための補正率(P327-京都) 1平方メートル当たりの平均公示実施額

121,5215円/m2×1.02=123,952/m2

なお、( )書きは建築統計年報55年(56年度版)のページ及び引用欄を示す。

別表10

純資産増加額等の計算

<省略>

(注)△は、マイナスを表わす。

別表A

原告の事業所得金額の計算

<省略>

別表B

借入金利息

<省略>

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